佐藤浩市の熱演が胸を揺さぶるミステリー「64(ロクヨン)」前・後編

「64(ロクヨン)」前・後編の感想

昭和最後の7日間から始まるごん太ミステリー

7日間しかなかった昭和64年に起こった少女誘拐殺人事件。身代金とともに消えた犯人は見つからず、平成へと切り替わる時代の流れの中で人々は事件そのものを忘れようとしていた。
けれど遺族は犯人を憎み続け、遺族の慟哭に立ち会った刑事は、犯人を追うことを止めない。

作家横山秀夫氏の同名小説の映画化とあって、シナリオは本格的なミステリーです。
犯人を追う中で浮き彫りになる警視庁や警察の黒い体質や、実名報道を巡るマスメディアと警察の確執、そして事件を追う刑事たちの人間ドラマも丁寧に描かれていて、前編121分、後編119分という重厚で濃密な映画です。

刑事であり父であるという葛藤を見事に演じた佐藤浩市

この映画の前編で佐藤浩市は第40日本アカデミー賞主演男優賞を受賞しています。それも納得の熱演です。

犯人に翻弄され誇りをかけて事件を追う刑事でありながら、娘からは理解されず、娘を理解しきれず、行方不明の娘を心配し続ける父親でもあるという役どころでした。

犯人に娘を奪われた遺族に深く共感しながら、自分は娘を苦しめる父親なわけですから、その複雑な思いを、時に情けなく泣きながら演じた佐藤浩市の父性が画面に溢れる映画でした。

実名報道の意味を今一度考える社会派映画でもある

事件が起こった時の報道の在り方、実名報道の意味、そういった今でも議論が尽きないテーマも劇中で描かれます。

警察との報道協定をここまで熱く描いた作品もそうないのではないかと思います。

映画を見ながら、父親とは、正義とは、報道の在り方とは、と物思いに耽るのも良いかもしれません。