岩井俊二監督「スワロウテイル」は邦画の魅力を凝縮した作品

「スワロウテイル」の感想

日本のようで日本にはない世界観のリアル

映画「スワロウテイル」は1996年に公開された映画で、俳優の三上博史と歌手のCHARA、当時新人だった伊藤歩の三人が主演、他に江口洋介、渡部篤郎、山口智子、大塚寧々など豪華なキャストが出演して注目を集めた作品です。

舞台は日本のどこかにある「円」を求めて集まった移民達の街。もちろん架空の街なのですが、日本語、英語、中国語の言葉が混ざり合い、日本の窮屈さを残した外観のスラム、ヤクザやマフィアが巣食う危険な街、その世界観は雑多でありながら完成しているリアルさがありました。

そんなどこかに在りそうな街で、日本の「円」に夢を抱きならが生きる無国籍な人々。身体を売り、心を売り、犯罪に手を染めながら、それを慰めるように歌うCHARAの歌声は映画の世界観をより深いものにしました。

岩井俊二監督の映像美

岩井俊二監督の映画といえば、キャラクターの心情を言葉以上に表現する映像美です。
このスワロウテイルでは、CHARA演じる娼婦グリコの胸元にある「アゲハ蝶のタトゥー」だけが色鮮やかで美しく、その美しさだけを支えにする人々の虚しさが映像に溢れています。

日々を愉快に過ごしていても、大金を手に夢を叶えても、それを失っても、「アゲハ蝶のタトゥー」の美しさだけが変わらない。

セリフでは表せないそれぞれのドラマがその美しさとの対比で描かれるのです。

またその映像美に、音楽プロデューサー小林武史氏の音楽が重なって、切なく激しく、無情な世界を味わい深くしています。

古い邦画と侮るなかれ

私にとっては邦画を好きになった原点の作品です。日本の繊細さや忙しなさを背景に、日本人が作った映画として素晴らしいものだと思っています。初めて買ったDVDでもあります。邦画という概念の変わる映画かもしれません。