実話を基にした問題作セリア・リーズの「魔女の血をひく娘」

魔女の血をひく娘について

作品の時代背景と主人公メアリー

魔女の血をひく娘は今から300年以上前のアメリカで行われた魔女裁判の事件を基にして書かれた作品です。本作の執筆はイギリス出身の作家セリア・リーズ(Celia Rees)によるもので、2001年度のガーディアン賞の最終候補に残った作品として注目を浴びました。

この物語の主人公、メアリーは森の中の小屋で祖母と一緒につつましく暮らしていましたが、祖母が薬草に詳しい事から魔女として疑われ、村人たちの目の前で首吊りにされたのです。

祖母の血をひくメアリーも魔女の一族として命を狙われそうになり、その場を逃れアメリカ行きの船に乗る事が出来ました。彼女は新天地の生活に一縷の望みをかけますが、穏やかな日々もつかの間、魔女の疑いをかけられます。

日記に込められた思い

メアリーは裁縫の達人で、一時期その腕を買われて仕事を請け負っていました。本書を書くきっかけは当時縫っていたキルトの中から彼女自身の日記の紙片が見つかったからだと言われています。

アメリカンキルトは違う布の端切れをはぎ合わせて作りますが、表布と裏布の間に隙間が出来ないようにして仕上げるのが常識だったそうです。

本来ならそこに自分の日記を隠す事はありえない事ですが、このキルトは彼女を家族同然に扱ってくれた人達に大切にされ、世代を超えて愛用されていました。メアリーと離れ離れになった後、彼女達は幸福な一生を送りましたが、全部で十人の女性と生活を共にしたのです。

キルトが発見されるまで常に危険にさらされている自分の代わりに日記の断片に愛する人達の人生を見守りたいという思いや、いつかこの事実を知ってほしいという思いが日記をキルトの中に隠す行為につながったのかもしれません。

事件の風化防止による問題提起と解決への道

現代社会でも迫害は問題として取り上げていましたが、ここまで理不尽な目に合う事は稀有です。

無実の人間が冤罪で処刑される事件はあってはならない事ですが、この本を読む事で事件の風化や冤罪の防止につなげる事が出来るでしょう。

現在生きる人達が視野を広く持つ事が解決への道につながると思います。