リュドミラ・ウリツカヤ著「ソーネチカ」を読んだ感想

ソーネチカを読みました。

主人公ソーネチカについて

私が好きな本はロシアの女流作家リュドミラ・ウリツカヤの著作「ソーネチカ」です。ソーネチカはロシア語で「ソーニャちゃん」という意味で、夫のロベルタが好んで用いた彼女の愛称。

幼い頃から本の虫で、図書館の司書をしていた彼女は決して容貌が良いとは言えませんが、知的で思いやりあふれる女性です。ソーネチカは勤務先の図書館で画家のロベルタと運命的な出会いを果たし、すぐに結婚を申し込まれます。

彼はロシアの反体制派で収容所生活を経験した後流刑の身となり、貧しい生活を送っていました。二人は結婚後も流刑地を転々としましたが、ソーネチカが娘のターニャを出産した後ロベルタが製作した子供用の玩具が評判を呼び、モスクワで大きな家に住めるようになったのです。

ソーネチカが愛した家族との生活と転機

ソーネチカは結婚する前は本をこよなく愛していましたが、主婦になってからは家の事を切り盛りする事が増え、次第に本から遠ざかるようになりました。それでもターニャには本を読むことを推奨し続けたのは、本を読む事がどれだけ彼女にとって有益な事をもたらすのかを教えてあげたかったのに違いありません。

ターニャは彼女たちの家に美少女のヤーシャを連れてきますが、この少女と夫のロベルタが恋人として惹かれ合い、ヤーシャをモデルとした数々の名作を生みだす基となりました。

ソーネチカは夫とヤーシャの関係を知ってショックを受けますが、ヤーシャに対しては「作品を生む原動力になった女性」として、感謝の念を持ち続けました。

ソーネチカの感想

普通の女性なら夫のロベルタやヤーシャを責める気持ちや自分を優先してほしいと思う気持ちが起こったかもしれませんが、芸術家を夫にした時から諦観の境地に達していたのかもしれません。ヤーシャの事も娘のように可愛がっていましたし、二人が出会ったのは芸術の神導きだと考えていたのでしょう。皮肉な事かもしれませんが、多くの本を読むよりロベルタとの生活を優先させたのも彼の自由な気質が気に入っていたからに違いありません。

私はソーネチカがヤーシャを夫ロベルタの芸術の女神だという考えを否定しませんが、ソーネチカはそれ以上の存在だと思っています。彼女はヤーシャと比べると容貌は美しくありませんが、家族との生活を大切にし、夫と添い遂げ彼の最期を看取りました。そんな彼女の姿は、雪国で一足先に春の訪れを告げるスノードロップだと言っても過言ではないでしょう。

彼女は物語の最後で再び本を開きますが、最初の頃と違って目が見えにくくなっています。彼女自身の物語は続きますが、周りの人達は多くの本を読む以上に彼女から得る事が出来るでしょう。