「音楽が溢れる船旅!海の上のピアニスト」

海の上のピアニストについて

幻のピアニスト

数ある音楽映画の中で私が特に好きなのは、イタリア映画の「海の上のピアニスト」です。名作映画に名曲は付き物ですが、この映画はその音楽が背景にあるのではなくてメインになっています。豪華客船で孤児として生まれた「1900」と名付けられたピアニストの男性が主人公。トランペット奏者だったマックスという男性が楽器屋の店員に船での出来事を話すところから物語は始まります。傍から聞いていれば実話のような、おとぎ話のような印象を受けます。それは何といっても船に乗った者でしか1900の存在を確認することができないからでしょう。

音楽的な見どころ

この映画の良さは音楽です。王道の映画音楽、ジャズ、ラグタイムも流れます。特に注目すべきシーンは3点あります。

この映画で一番有名な曲

ニューシネマ・パラダイスの作曲で有名なエンニオ・モリコーネの音楽「愛を奏でて」は気になる女性に思いを寄せる1900がピアノを弾きながらレコーディングしたシーンで登場します。ゆったりとしたメロディーは静かで、海のように広く遠くまで音楽が渡っていくような感覚になります。この映画で一番有名な曲です。

自分も隣に座ってみたい!と思わせるシーン

船酔いをしたマックスが1900とダンスホールで出会い、ピアノの足のストッパーを外して二人でピアノの席に座り、船の揺れと一緒にピアノもダンスをしているかのようなシーンがあります。私はこのシーンがとても好きです。曲は「マジック・ワルツ」と言います。誰もいない夜のダンスホールを軽快なワルツの演奏が流れます。自分も隣に座ってみたい!と思わせるシーンです。

好きでピアノを弾いているだけ

1900の噂を聞きつけた黒人ジャズピアニストが勝負を挑んで船に乗ってきます。最初は勝負をする気もないような1900でしたが、最終的には相手に勝利します。このシーンで感じることは1900は地位や名誉などに興味がなく、好きでピアノを弾いているだけ。音楽はどちらが優れているかを競うものではない、と思っているような印象を受けました。その証拠に船を降りてもっと有名になれる、陸で生きようという外部の声にも彼は同意できずに船を降りるのを止めます。

感想まとめ

私は1900の視点で物語が動いていても本当の彼の心理を掴むことは難しい気がしました。彼は飄々としていて、哲学的な印象で、欲が少ないと感じたからです。人間としての癖が少ないように思えました。ピアニストというとコンクールなどで競い合って頂点を目指す事が多いですが、彼はそういったピアニストではありません。

陸で認められるピアニストと違い、一生を海の上で過ごしたピアニスト。ダンスのような娯楽の中で生き、その存在はレコードに証拠として残りましたが、彼自身を確認できるのは限られた人間だけです。

彼は船を降りるかどうか迷ったシーンがあります。それは陸は無限に広がっていて88という鍵盤の中、船という特定の中で生きてきた彼にとって陸は広くて生きるには難しいと感じたからです。でも私は逆のような気がしました。

彼のような制約を受けていないピアニスト、自由に音楽を奏で、気まぐれのように演奏を変える。陸よりも海の方がずっと大きくて広いと思います。既に自由である海の上、その中の船という場所が彼をとどめるには最適な場所なんだと思いました。