戦闘シーンのない異色の戦争映画『ジャーヘッド』

戦争映画なのに戦闘シーンがない!?不思議な映画、ジャーヘッド

皆さん、戦争映画というとどんなものを思い浮かべますか?銃でドンパチ、爆弾が炸裂し、ヘリや戦闘機が飛び交う熾烈な戦場…登場人物は次々に戦士していく悲惨な光景を描いたものを想像する方がほとんどだと思います。

しかし、『ジャーヘッド』という映画は、戦争映画でありながらほとんど劇中に戦闘シーンがないという異色の作品です。これは湾岸戦争に従事したとある海兵隊員の手記を元に撮影されたもので、つまり脚色はあるもののノンフィクションというわけですね。

砂漠で繰り返される、「待機命令」と「訓練の日々」。

この映画のストーリーは、とある崩壊した家庭に生きる青年が、半ば現実逃避のように米軍へと志願し、厳しい訓練を経て湾岸戦争に送り込まれてからの日々を描くという内容のものです。

主人公の青年は中東に送り込まれる前に銃でドンパチを繰り広げる戦争映画を見て興奮します。「自分も戦場に行くのだ」と。ですが、主人公とその仲間たちを待っていたのは、何もない砂漠のど真ん中にある基地でひたすら訓練を繰り返す日々です。

戦況はアメリカ軍に有利で、ほとんど空爆などで敵の都市を攻め落とし、歩兵である主人公に出番が来ることはほとんどありません。

劇中で主人公たちの部隊が進軍しても、あるのはただ空爆によって焼かれた街と敵兵士の亡骸ばかりです。敵の部隊と遭遇し、銃を打ち合うなどという映画のような事態はまったく起こりません。

「退屈」に侵されていく、戦争のリアル。

では、この映画は退屈なのかというと、そうではありません。まさにその何もない退屈な戦場に主人公の精神が追い詰められていくのがこの映画の見所です。

映画終盤、青春をかけて厳しい狙撃兵としての訓練を受けた主人公が、たった一度だけ、敵の司令官を狙撃する任務を与えられた後、その任務を撤回されたとき「俺にやらせてくれ!」の熱演がシーンが見事です。

結局、この映画中で主人公は一人も敵兵を撃つことなく、知らない間に戦争が終わって帰国しますが、その心には虚しさが残ります。

戦争の悲惨さや派手さばかりを描く戦争映画に真っ向から逆のアプローチを行い、戦場の「リアル」を描く、ジャーヘッドは戦争映画の中でもかなりの異色作といえるでしょう。ですが、その戦場で長い日々を過ごす兵士のすり切れた心理の描写は一見の価値ありです。